消防予第170号
平成15年6月24日
各都道府県消防主管部長殿
消防庁予防課長
平成15年6月13日に公布された「消防法施行規則の一部を改正する省令」(平成15年総務省令第90号。以下「改正省令」という。)の施行については、「消防法施行規則の一部を改正する省令の施行について(通知)」(平成15年6月13日付け消防予第167号及び消防安第89号)により通知したところですが、今般、消防用設備等の技術上の基準の細目に係る運用上の留意事項についてとりまとめましたので通知します。
今回の改正は、平成13年9月1日に発生した新宿区歌舞伎町ビル火災を契機に行われた、「小規模雑居ビルの防火安全対策に関する答申」(平成13年12月26日付け消防審議会)を踏まえ、自動火災報知設備、避難器具等に係る技術上の基準の細目について改正を行ったものです。
貴職におかれましては、下記事項に留意の上、その運用に十分配意されるとともに、貴都道府県内の市町村に対してもこの旨周知されるようお願いします。
特定1階段等防火対象物(消防法施行令(以下「令」という。)別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が令第4条の2の2第2号に規定する避難階以外の階に存する防火対象物で、当該避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段及び傾斜路の総数が2(当該階段及び傾斜路が屋外に設けられ、又は規則第4条の2の3に規定する避難上有効な構造を有する場合にあっては、1)以上設けられていないものをいう。以下同じ。)の出火危険性、避難困難性の高さにかんがみると、階段室等における火災の早期感知の必要性が高いことから、改正省令により特定1階段等防火対象物の階段室等における煙感知器の設置間隔は、垂直距離7.5mにつき1個以上の個数を設けることとされたこと。
なお、感知器の種別が3種の煙感知器については、火災感知の遅れが懸念されるため、特定1階段等防火対象物の階段室等の部分には設置できないこととされたこと。
特定1階段等防火対象物においては火災報知の遅れにより多数の死者が発生する危険性があることをかんがみ、改正省令により特定1階段等防火対象物に設置される自動火災報知設備の受信機については再鳴動機能(地区音響停止スイッチが停止状態にある間に、受信機が火災信号を受信したとき、地区音響停止スイッチが一定時間以内に自動的に(地区音響装置が鳴動している間に停止状態にされた場合においては自動的に)鳴動状態になる機能をいう。)付きのものとすることとされたこと。
改正省令により自動火災報知設備又は非常警報設備の音響を的確に在館者に報知する措置を講じる必要がある防火対象物として、特定1階段等防火対象物であって、ダンスホール、カラオケボックスその他これらに類するもので、室内又は室外の音響が聞き取りにくい場所があるものが規定されたが、具体的には次に掲げる場所を含む防火対象物をいうものであること。
ただし、ダンスホール、カラオケボックス等であっても、室内で自動火災報知設備又は非常警報設備の地区音響装置等の音を容易に聞き取ることができる場合は対象とはならないこと。
また、「他の警報音又は騒音と明らかに区別して聞き取ることができる」とは、任意の場所で65dB以上の音圧があることをいうものであること。ただし、暗騒音が65dB以上ある場合は、次に掲げる措置又はこれらと同等以上の効果のある措置を講ずる必要があること。
なお、常時人がいる場所に受信機又は火災表示盤等を設置することにより、地区音響装置等が鳴動した場合に地区音響装置等の音以外の音が手動で停止できる場合にあっては、令第32条の規定を適用し、当該地区音響装置等は、他の警報音又は騒音と明らかに区別して聞き取ることができるものとして取り扱って差し支えないこと。具体的には、ディスコにおいてディスクジョッキーが常時いる場所に火災が発生した旨が表示され、速やかにディスクジョッキーが一般音響を停止することとされている場合等が想定される。
上記(1)又は(2)の場所又は状態で設置する避難器具は、現行の避難器具で差し支えないこと。
なお、「安全かつ容易に避難することができる構造のバルコニー等」とは、「消防法施行規則の一部を改正する省令の施行について」(昭和48年6月6日付け消防予第87号。以下「第87号通知」という。)第6、3(1)イに示されている概ね2平方メートル以上の床面積を有し、かつ、手すりその他の転落防止のための措置を講じたバルコニーその他これらに準じるものをいうものであること。
また、「常時、容易かつ確実に使用できる状態」とは、緩降機等を常時、組み立てられた状態で設置する等、避難器具が常時、使用できる状態で設置された場合をいう。
改正省令により義務付けられることとなった簡単な操作で使用できる避難器具は、特定1階段等防火対象物以外の防火対象物に対しても設置できるものであること。
この改正省令により簡単な操作で避難できる避難器具に係る措置が既存の特定1階段等防火対象物に対しても遡及されることとなるが、改正省令附則第5条に基づき消防庁長官が定める方法により平成18年10月1日までに必要な措置を講じた場合は、改正省令第27条第1項第1号の規定は適用しないこととされたこと。これについては消防庁告示として近く公布する予定であること。
改正省令により、特定1階段等防火対象物の避難器具を設置し、又は格納する場所(以下「避難器具設置等場所」という。)の出入口の上部又はその直近には、避難器具設置等場所であることが容易に識別できるような措置を講ずることとされたこと。具体的には、当該部分に「避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目」(平成8年4月16日消防庁告示第2号。以下「告示第2号」という。)第5に規定する「避難器具の位置を示す標識」を設けることで足りるものであるが、避難器具設置等場所であることが容易に識別できる措置であればこれ以外の方法によることもできるものであること。
また、特定1階段等防火対象物には、上記の場所に加えて避難器具設置等場所がある階のエレベーターホール又は階段室(附室が設けられている場合にあっては、当該附室)の出入口付近の見やすい個所に、避難器具設置等場所を明示した標識を設けることとされた。当該標識は、平面図に避難器具設置等場所及びその経路が明示されているものを指し、様式等(大きさ、材質等)は問わないものであること。
固定はしごの降下口の大きさは、第87号通知により、直径60cm以上の円が内接できる大きさとされていたが、告示第2号が平成14年6月24日に一部改正され、つり下げはしごの取付け具である避難器具用ハッチの降下口の大きさは直径50cm以上の円が内接できる大きさとされた。このため、固定はしごとつり下げはしごの降下口の大きさの規定が異なることとなったため、固定はしごの降下口の大きさを直径50cm以上の円が内接する大きさとし、両者の整合を図ることとしたものであること。
消防法施行規則の一部を改正する省令(昭和48年6月6日自治省令第13号)により、4階以上の階に避難はしごを設ける場合は、金属製の固定はしごを設けることとされ、つり下げはしごを設けることができなかった。しかしながら、「マンホールに組み込まれた避難はしごの取扱いについて」(昭和48年10月31日消防安第50号。以下「第50号通知」という。)により、一定の要件を満足する場合は、令第32条の規定を適用して、4階以上の階につり下げはしごを設けることができることとされていた。一方、告示第2号の一部改正に伴い、マンホールは避難器具用ハッチとして位置付けられ、基準の整備が行われたことにより、安全性、信頼性が確保されたことから、第50号通知を本則化し、避難器具用ハッチに格納されたつり下げはしごを設ける場合は、4階以上の階につり下げはしごを設置することができることとしたものであること。
各号のただし書の規定は、避難器具の性能が向上したことにより、安全に使用できる措置を講じた避難器具を4階以上の階に設置することができるようにするための規定であること。
改正省令の施行により第50号通知は廃止すること。