避難器具用ハッチは、消防庁において平成4年、金属製避難はしご及び救助袋の取り付け金具としてその安全性の確保、品質の確認を図る必要がある器具として指導基準が定められました。同時に、当該ハッチの製造にかかる品質の確保、確認の具体策として避難器具用ハッチの自主承認制度が考慮、検討され、その実施が社団法人全国避難設備工業会(以下「当工業会」という。)に委ねられました。
以降、工業会においては、避難器具用ハッチの型式承認を行い、個別承認及び当該承認にかかる個別証票の交付を通じ、品質管理の徹底、安全性の確保を図って来たところであります。
避難器具用ハッチの指導基準は、平成14年6月24日「避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目の一部を改正する件」として告示(以下「告示」という。)化され、技術基準として規定されました。
避難器具用ハッチの品質管理にかかる前記の自主承認制度は、当工業会が平成15年3月28日総務大臣から指定認定機関として指定されたことにより、新たに公的な認定機関として位置づけられ、指定認定機関制度による品質管理に移行することとなりました。
さらに、この指定認定機関制度は、平成16年登録認定機関制度に改められましたが、当工業会は引続き平成16年9月22日避難器具用ハッチの登録認定機関として、総務大臣より登録書が交付され、今日まで避難器具用ハッチの認定に携わり、その品質の確保、確認の業務を進めて参りました。
ここでは、この登録認定制度において新たに避難器具用ハッチの型式等を取得されようとしております事業者の方々向けに、その手続き等に対する概要をご紹介いたします。また、併せて、工業会として従来から自主的制度として実施しております、既存の防火対象物に存しています鉄製の避難器具用ハッチの改修のために用いられる改修避難用ハッチ等の自主認証についてもご案内をいたしております。
第1 避難器具用ハッチにかかる登録認定業務に関する事項
事業者における避難器具用ハッチの型式等取得にかかる手続き概要は、おおむね「認定業務のフローチャート」に掲げるとおりとなります。
型式認定等については、次のとおり処理されます。
- 事業者等の避難器具用ハッチの型式取得については、避難器具用ハッチ認定規程(以下「認定規程」という。)第8条第1項に基づく避難器具用ハッチ認定細則 (以下「認定細則」という。)第2条第1項に定める書類等を申請書に添付して工業会事務局(以下「事務局」という。)に提出します。
- この場合、申請書類については、認定細則第2条第1項に定めるところによりますが、さらに、避難器具用ハッチの認定実施要領 (以下「認定実施要領」という。)2により、生産管理表、工程表、材質検査証明書を添付するとともに、設計図面については認定細則別添第1号から第5号までの例示に示すようにA3の大きさで所要の記述内容を含むものとしています。また、同要領においては、認定細則第2条第1項に定める品質管理については、 避難器具用ハッチの品質管理基準についての別紙の品質管理表と同様の品質管理表(認定実施要領 2)を用いた説明資料としてよいものしております。
- なお、申請にあたっては、避難器具用ハッチ認定基準の3仕様、強度の(4)、(5)による試験、設計計算書等の添付を必要とする場合があります。
- 事務局は、申請形式が適合し、認定規程第19条に基づく避難器具用ハッチ認定手数料規程 (以下「手数料規程」という。)に定められた手数料(型式申請は80000円:手数料規程第2条 別表)が納入されていることを確認した後受理する(認定規程第8条第2項及び認定細則第2条第2項)とともに、避難器具用ハッチ認定委員会(認定規程第7条及び避難器具用ハッチ認定委員会規程( 以下「認定委員会規程」という。))の専門委員会(認定委員会規程第4条)に技術基準の適合性の審査を委託し、告示に規定された基準及び避難器具用ハッチ認定基準に適合する旨の審査を当該専門委員会から受けた(認定規程第8条第3項、認定細則第2条2項)後、型式申請どおりであるかどうかについて製品の検査と品質管理体制にかかる検査(認定細則第2条第4項)を 避難器具用ハッチ工場立入検査要領(以下「立入検査要領」という。)により行うものとしています(認定規程第17条)。
- 事務局は、続いて、(2)の検査結果を専門委員会に報告し(認定細則第2条第5項)、専門委員会はこの結果を審議し、すべての型式に係る審議結果を避難器具用ハッチ認定委員会の認定委員による委員会(認定委員会規程第3条)に具申する(認定細則第2条第6項)ことされており、当該認定委員による委員会は、型式認定の可否決定を行い、事務局に決定を報告する(認定規程第8条第3項、認定細則第2条第6項)こととされております。
- 事務局は、(3)の決定に基づき型式認定にかかる認定又は不認定の通知を申請者に行い(認定規程第8条第4項、第5項及び第6項)認定書(認定規程 別記様式)を交付するまたは不認定等の場合は理由を開示(細則別記様式第16号)することとしています。
- 認定の結果について不服のある者は、通知受領後すみやかに工業会に申し出るものとされ(認定規程第8条第6項)、これらの申し出については、認定委員会等により処理されることとしています(認定規程第7条)
- 型式変更 については、上記(1)から(5)までの例により事務処理手続きが定められており、軽補正については、工業会において確認され、承認を得ることとされております(認定規程第9条並びに認定細則第3条及び第4条、手数料規程第2条別表 型式変更48000円)。また、型式変更、軽補正の区分については、認定実施要領1において区分しています。
個別認定については、次のとおり処理されます。
- 個別認定については、認定規程第13条第1項、認定細則第7条に基づいて申請を行うことになりますが、工業会では、形式が整っていること、個別認定に係る手数料(180円/1個:手数料規程第2条 別表)の納付を確認し、受検希望日の調整(認定細則第6条)、試験場所の調整(認定細則8条)等を行います。
- 工業会は、申請がなされますと、避難器具用ハッチ認定委員会で指名された検査員により当該申請にかかる審査、検査を行わせることとしており(認定規程第12条第2項)、当該検査員は、審査、試験結果により、適否を決定し、工業会に報告すること(認定規程第12条第3項)としています。この場合の審査、試験等は、認定細則第10条から第14条の検査方法、検査項目、欠点の分類、試験のきびしさ、合否の判定によりますが、具体的には立入検査要領にもとづいて、製品についての抜き取り検査、品質管理状況について行います。
- 工業会は、(2)の決定を受けて個別認定の合格通知を行います(認定規程第12条第4項)が、これは、証票の交付(認定細則 別記様式第5号個別認定申請書)によることとしています。
- 工業会が、個別認定を行った避難器具用ハッチについては、証票を貼付することとされており(認定規程第13条第1項、認定細則第15条)、証票を貼付してない場合等では、型式認定の失効要件の一つとなります(認定規程第11条第2項第6号)。
- なお、検査員及び個別認定申請受験者は、立入検査成績履歴表及び認定証票受払表に記入された事項を確認し、署名捺印して記録することとされています(認定細則第16条)。
補正試験に関する事項については、次のとおりです。
工業会は、委員会又は検査員が行った型式認定又は個別認定に係る審査、試験において、不良事項があり不適合となった場合は、認定細則により、さらに1回に限り審査、試験を行わせることができます(認定規程第14条、認定細則第22条、手数料規程第2条 別表補正試験5000円)。
工業会の立入調査等については、次のようにいたします。
工業会は、必要に応じ、又は定期に関係者に連絡し立入検査、調査を実施しますが(認定規程第17条、認定細則第5条)、原則的には初回の申請からは、連続2回、合格後は、6ヶ月ごとに製品の状況、品質管理の状況を検査、調査をさせていただきます(立入調査要領)。
また、これらの工業会による立入検査、調査の結果が優良とされた場合の効果としては、製造者に対する検査について、書面審査とすることができるとされております(認定細則第2条第4項及び第17条、認定実施要領3)。
型式認定の失効について、次のように規定されています。
- 工業会は、認定基準が変更され、すでに型式認定を受けたハッチの型式に係る形状等が、当該変更後の認定基準に適合しないものにあっては、当該型式認定の効力を失わせるものとしています(認定規程第11条第1項)。
- 工業会は、型式認定を受けた者が、次の要件に該当するときは、当該型式認定の効力を失わせることができるものとされています(認定規程第11条第2項)。
- 不正の手段により型式認定を受けたとき
- すでに型式認定を受けたハッチの形状等を型式変更、軽補正の認定または承認を受けないで変更したとき
- すでに型式変更を受けたハッチに品質管理上著しい不備又は欠陥があると認めたとき
- 正当な理由がなく、当該型式認定を受けたハッチに係る個別認定の申請を当該型式の認定をした旨の通知を受けた日から2年以内にしないとき、又は引き続き2年以上しないとき
- 個別認定を受けたハッチに使用上の注意事項等を表示すべきものとされているときの当該表示をしなかったとき
- 型式認定を受けた者が、当該型式にかかる個別認定の表示を付さず、又は個別認定の表示と紛らわしい表示を付して販売、展示したとき
- 上記の事情により、型式認定の効力を失わせたときは、工業会は、型式認定を受けた者に通知するとともに、その旨を公表することとされています(認定規程第11条第3項)
記録、帳簿等の保存について、次のようにされています。
- 工業会は認定業務にかかる帳簿その他の書類を認定細則に基づき整理し、保管することとしています(認定規程第19条、認定細則第25条)
- 工業会による型式認定、個別認定の受験者もまた、工業会の記録の整理、保存の例により認定にかかる書類を整理し、保存しなければなりません(認定細則第26条)
登録認定業務の個別認定の表示
工業会における登録認定業務における個別認定の証票は、消防法施行規則第31条の4第3項の表示の様式を定める件(平成12年消防庁告示第19条)の様式1によります。
第2 避難用ハッチの自主認証業務に関する事項
工業会においては、避難器具用ハッチの告示基準が整備された際、経過規定によりその基準が適用されないこととされた既存防火対象物等の鉄製ハッチ等について、安全性を勘案し、ステンレス製として改修を進めるために用いられる改修避難用ハッチ及び防火対象物に直接固定されているはしご等に用いられもので、内部に避難器具を格納していない非格納型避難用ハッチ、改修非格納型避難用ハッチについても、平成4年以来自主承認制度の中に取り入れて型式承認、個別承認を実施してまいりましたので、 名称については自主承認を自主認証として改めました(平成17年3月1日)が、当該避難用ハッチについて自主認証を継続しております。
これらの認証業務については、登録認定業務、避難器具用ハッチ認定規程等関係規程に準じた規程等を定め実施しております。
この場合の改修避難用ハッチ等にかかる技術基準は、工業会において定めた「改修避難用ハッチ、非格納型避難用ハッチ、改修非格納型避難用ハッチ及び避難器具用ハッチに付加する機能評価品の基準(認証基準)」によるものとしておりますが、この基準は工業会が自主承認制度において定められ実施してまいりました基準と同様です。
第3 その他
上記の認定規程、認定細則、手数料規程、認定実施要領、避難器具用ハッチ認定基準等並びに自主認証にかかる関係規程類につきましては、一般社団法人全国避難設備工業会において入手することができます。